こんにちは、くまごろーです。今回は博士課程に進学するか、企業へ就職するかを悩んでいる人向けに、現在博士1回生(2020年度現在)の僕が、博士課程に対する自分の考えと少し助言を書いていこうと思います。ちなみに専攻は工学です。
この記事を読むことで、博士課程に行く決意をするのか、就職する決意をするのかはあなた次第です。
それでは1年ほどで体感した博士課程のリアルを紹介していきます。
博士課程へ行くメリット
まずは博士課程へ進学するメリットについて書いていきます。
- 研究の継続性
- 博士号の取得
- 普通では経験できない世界を経験可能
- 多くの人との交流
ざっと思いつく博士課程のメリットは以上の4つです。これからそれぞれについて説明していきます。
研究の継続性
博士課程の大きなメリットとして学部から修士まで続けてきた研究をそのまま継続できることが挙げられます。就職してしまえば、全く同じ研究を継続することはできません。研究に愛着があるほど、自分の手でその研究を進めることに魅力を感じるのではないでしょうか?
一方で、外部の大学院に進学する場合はその限りではありません。だいたいの場合、同じ分野の研究室に配属されるはずですので、知識量の増加的には差はないでしょう。しかし、研究内容が変わってしまう分同じ研究室に進学する場合に比べて魅力が薄い気がします。違う環境に身を置くことで成長することもあるので一概にどちらがいいとも言えませんが、外部進学は相当な覚悟がいるのは間違いありません。
個人的に研究の継続性だけで言えば、外部に進学するのと企業の研究職に就職するのも変わらない気がします。
博士号の取得
博士課程の修了後には、博士号を得られます。企業によって博士号を持っていることで給与が上がったりもします。日本では博士号をそれほど重要視しない傾向がありますが、海外で活躍しようと思う場合は博士号が研究職の免許的な扱いで、修士号では相手にしてもらえないこともあるようです。
しかし、海外でも日本の状況を理解している人が増えており、日本人なら博士号がなくても大丈夫と思われているのが現状です。
研究者として一人前の証なので持っていてマイナスに働くことはほぼないでしょうが、日本では思ったより評価されにくいということを頭に入れておいた方がいいでしょう。
しかし、自分の将来や社会情勢がどうなるかわからない以上、価値のあるものには違いありません。
普通では経験できない世界を経験可能
アカデミックという場はよくも悪くも実力主義です。自分の実力で研究を進め、国内学会や国際学会で発表したり論文を通して世界的に認められることなんて、就職したら滅多にありません。ワールドワイドに名前が残ると考えればその凄さがわかるかもしれません。修士の段階でそういう経験をする人も多いでしょうが、その数がどんどん増えていきます。研究者としての戦闘力が上がっていく感じ。
多くの人との交流
そもそも研究室は社会と比べて特異な場です。職場のように閉じられた環境であるものの、1年でガラッとメンバーが変わっていき、雰囲気も変化します。当然接する人数も増えるため、その分いろんな人と話す機会があります。
研究室だけでなく学会発表でも同様で、「今はあの人があの研究をやっているんだ」と思うこともしばしば。国際学会なんて人種すら違う人々が、研究という括りだけで一堂に会するので壮観です。
正直発表よりコミュニケーションがすごい楽しい笑。でも楽しめるコミュ力がないと苦痛だと思います……
博士課程へ行くデメリット
次は博士にいくデメリットについて書いていきます。
- 金銭面はマイナス
- 精神的な負荷
- あくまで実力主義
僕が考える博士課程に行くデメリットはこの3つ。
もちろん他にもいろいろあるでしょうが、あくまで僕の意見を述べていきます。
金銭面はマイナス
これはもう文面のまま。同世代がどんどんお金を稼いでいる中、学費やらなんやらでどんどんマイナスになっていきます。僕も学生支援機構の奨学金やら大学院の制度を利用して工面していますが、同窓会とかすると格差がすごい泣。なんかみんなキラキラしてる気がする……
大学の授業バイトなども今は収入が安定しないので、趣味を利用してブログで稼いだり投資で貯金をじわじわ増やしたり、普通のバイトはほぼ無理なので工夫する必要があります。
親の脛をかじれる場合はプライドを捨てて齧りましょう。その分就職してから返すのを忘れないこと。
あとにも書きますが金銭的不安は研究モチベーションにも影響するので意外と重要。ちなみに意外ですが、現在学費と学校のRA、TA制度で±0ぐらいです。奨学金があるので普通の生活はできますが、使えば使うほど借金になる恐怖。
学振とか財団とかで収入が得られることもありますが、当てにしない方がいいです。それ用の対策とかが必要なので、簡単には採用されません。宝くじと思っておくのが吉。
精神的な負荷
先ほど述べた金銭面の不安をはじめ、博士課程の在籍中は漠然とした将来への不安で精神的に辛いです。周りに相談できる同年代はおらず、学会発表や論文発表でしか自分の実力が測れないため、孤独な戦いとなります。
にもかかわらず、後輩や教授からは頼られること(雑用)が多く、精神的な負荷が大きいです。冗談抜きで修士とは比べ物になりません。
さらに、将来の進路も王道から外れるため、不透明になります。
日々精神修行。常に将来どうしよう……と頭をよぎります。うっ!頭が……
あくまで実力主義
メリットのところで実力勝負という話を少ししましたが、それがデメリットでもあります。
博士課程では、学会に出るのは当たり前、論文出してなんぼの世界です。当たり前ですが研究で結果を出さなければいけません。
論文を書いたことがある方ならわかると思いますが、実験結果が出てようが査読落ちという恐ろしいことがあります。幸い僕は経験していませんが(学振とか落ちてるけども)、つまりは実験だけやっていればいいってわけではないのです。
実験結果以外に、論理的思考力、文章力、研究内容の社会的インパクトが必要になります。つまり、結果を出していても、それが相手に伝わらなければ評価されない世界です。
ただ研究を続けたいというだけでは、確実についていけなくなります。キツいようですが、伝える能力やコミュニケーション能力を自力で伸ばしていかなければ、何もできない博士になる、もしくは最悪ドロップアウトします。
博士の就職が難しいと言われるのは、企業と研究内容のマッチング以上に、伝える能力の低さが原因だと思います。どれだけ知識があろうと、それを伝える能力がなければ知識がないのと一緒です。言えばわかってもらえるという甘えは通じない世界です。(社会でもそうですが)
博士課程へ進学するか悩んでいる君へ
ここまで博士課程のメリットデメリットを書きました。ここまで読んだあなたがどう思っているかはわかりません。私はエスパーではないので。
僕の意見としては、興味があるだけなら進学しない方がいいです。
理由は、進学した結果潰れる可能性の方が高いから。博士号は社会で必須ではありません。
僕も悩み抜きましたが、最終的に自分が将来、研究者となるのに必要と感じたから進学しました。将来国内にいるか国外にいるか、大学にいるか企業にいるか、わかりませんしまだ決めてません。
ただ国際学会を通じてこの世界を知り、今若いうちに、進学して博士になるのが自分の為になると確信しました。博士だけとるなら企業に就職してからでもできます。実際そう言って就職していった友人もいます。
でも、会社員生活なんて修了後の人生でいくらでもやるチャンスがあります。一方で、20代で博士号を目指すという経験は今しかできません。この経験は自分にとって、人生にとって価値のあるものだと僕は感じました。
なので僕は“今”じゃないとダメだと思い進学しました。これが正解かどうかなんてわかりません。
ただ言えることは、就職したら二度と博士号を目指さなかっただろうということ。そしてそれを思い出しては悶々と過ごすだろうということ。
たいそうな事を書きましたが、結局自分の情熱をどこで解放するかだと思います。それが大学での研究になるか企業での仕事になるかはあなた次第です。
僕の個人的な意見ですが、博士か就職かで真剣に悩むような人は、上昇意識が高いのでどこへ行ってもうまくやれると思います。
きっとどちらを選んでも後悔するし、選んでよかったと思いもします。でも、選ばなかった方を選び直すことはできません。ただ、真剣に悩んで選んだら後悔は少ないと思います。
こんな僕の意見ですが、博士課程へ進学するか悩んでいる君への参考になれば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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